談話会 (2004年度)


埼玉大学理学部数学教室では不定期に談話会を開催しています。
内容に関心のある方は御参加下さい。

場所:埼玉大学  理学部1号館  (3階)  基礎数理演習室
(お茶会の場所は理学部1号館3階のコモンルームです。)



次回の予定

○学術講演会
3月16日(水) 14: 00--15: 00 (13:30からお茶)
谷山 公規氏 (早稲田大学)
微分幾何体操と曲面の全曲率


アブストラクト:
微分幾何体操とは球面の曲率が正であることを体感出来る体操です。 平面曲線の曲率とその積分の考察から始めて 空間曲面とその全曲率に関するGauss-Bonnetの定理を紹介します。 またチップスターとプリングルスの微分幾何学的違いについても考察します。

○矢野環教授 転出講演
3月16日(水) 15: 30--16: 50
矢野 環氏(埼玉大学)
TreeからNetworkへ --特異点から有限幾何へ--


アブストラクト:
 Tree は、まず始めに、過去に関与した特異点の ADE theory などを意味する。そ れは、hyperplane arrangement にも、(不変式論や lattice を通して)coding theory にも関係する。そして、写本系譜や生物系統図の Tree が、私が今後関与す る部門となる。但し最近では、系統現象の記述に Tree では不十分で, Network にせ ねば成らなくなっている。いずれも、系統の混雑(混態、雑種)が深刻な問題である。 なお、課題は「分類」ではなくて、「系統」である。
 DNA を扱う場合も、写本群を取り扱う場合も、数学的枠組みは同じである。話を簡 単にすれば、下記の通り。

 高次元空間に有限個の点(座標成分は 01)が与えられている。  これらの点の配置(有限個の点の距離空間)を尤もらしく tree, network とせよ

”尤もらしく”とは、一般的に言えば、何らかのコストを最小にする。例えば、”距 離”関係を極力再現する、或いは進化過程を最小手数の説明で行う、ような tree な どを作る。01のベクトルなら、一番普通の距離は(coding theory で云う) Hamming distance である。(単に分類なら、主成分分析とか対応分析で済む。クラ スター分解も分類)
 系統図を求める古典的方法は、文献学では Lachmann による系譜法(Stemmatics), 生物系統学では Hennig による Cladistics、があり、ある規準(principle of parsimony) で系統を表す Tree を求める(これはNP完全問題)。しかし、生物では 雑種の問題、文献学では混態の問題があり、Tree に拘ると色々と都合が悪い。1992 年に、Split decomposition という手法が提起された(Bandelt, Dress: Advances in Math.92)(注1)。
 これの基礎になっているのは、Dress の 1984年の論文であるが、その主定理(あ る距離空間の category における、universal object の存在)は、実は−よくある 話だが−1964年に、Isbell によって発表されていた(Comm. Math. Helvetici 39)。 Bandelt-Dress の手法による data analysis のプログラム SplitsTree が公開さ れている(V.Moulton, 1992; Dress-Huson-Moulton 1996, D.H.Huson, 1998)(注 2)。これが有名になったのは、カンタベリー物語の写本・刊本群の整理においてで あった。当初 P.Robinson は、Tree を求める手法でなんとかなると思っていたが、 それでは問題が生じ、この SplitsDecomposition がよい結果を与えた。それは、 Nature にも掲載された(NATURE 394, 27 AUGUST 1998)(注3)。  現在ではこれでも不満があるため、NeighborNet とかまた色々なものが出ている (D.Bryant, V.Moulton; WABI'02, LNCS 2452, 2002。SplitsTree に含まれている)。 Reduced median network についても、少し触れる(K.T.Huber, M.Langton, D.Penny, V.Moulton, M.Hendy, Applied Bioinf. 1, 2002)。
 具体的な写本群の系統に使った例も、色々提示する。

注1 Bandelt-Dress の主定理(距離分解)の別証明が、昨年公表された。平井広志 氏(京都大学数理解析研究所助手。東京大学大学院 情報理工学系研究科数理情報学 専攻出身。日本OR学会第22回学生論文賞授賞)。数理研ともかくて縁が繋がっている。 さらには、今になって気づいたが、昨年の「第六回 日本進化学会」にて (8月4 日の)4E1 企画が、”系統解析の アルゴリズムとその応用”であり、そこに平井氏 の講演「スプリット分解法の数理とその拡張」があった。(8月6日の)6B1 が、” 非生命体の進化理論2”であり、私の「茶道古文書の定量的文献系図」があった。ま さに、missed opportunity である。
注2 Version 1 は、Dress の指導の元に R.Wetzel の学位論文で発表(1995)。 Bandelt,Huson が協力している。Version 2 が公開版であり、Huson による(1998)。
注3 但し、公表された図は事前に混態写本 El などを取り外し処理している。すで に PAUP* 処理により、それらは接続位置が不安定であった。



過去の記録

12月3日(金) 16: 00--17: 00 (15:30からお茶)
宮岡 礼子氏 (九州大学)
代数的極小曲面のガウス写像の除外値について

10月22日(金) 16: 00--17: 00 (15:30からお茶)
廣瀬 進氏 (佐賀大学)
4次元多様体内の閉曲面の変形と写像類群

9月10日(金) 16: 00--17: 00 (15:30からお茶)
倉田 和浩氏 (東京都立大学)
非線形楕円境界値問題に付随する最適化問題について

7月30日(金) 16: 00--17: 00 (15:30からお茶)
飯高 茂氏 (学習院大学)
いまなぜ,平面曲線の研究をするか


2002年度の談話会

2001年度の談話会

2000年度の談話会


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