私は特異点へのアプローチは大きく分けて二つあると考えています。 一つは特異点解消という考え方です。 これは、要するに、何とかして合理的に特異点を特異点でないように思おう、 と言うことです。 そして、特異点の解消の様子が良くわかれば特異点の様子もわかるであろう、 と考えるわけです。 現在、 blow-up したら解析的に同型になる位相同値という考え方で、 実多項式の零点集合や写像の分類問題に取り組んでいます。 なお、 blow-up したら解析的に同型になる位相同型というのは ある意味では微分可能な(または解析的な)位相同型と考えられ、これはそれ自身 非常に興味深い対象です。
もう一つの考え方は、悪い特異点はわからないから摂動して 特異点を簡単にしてしまって、その簡単な特異点についての理論を作ろう という考え方です。 そのような意味で簡単な特異点のリストについては、 すでに多くの人の分類結果があります。 私は悪い特異点を摂動したときに簡単な特異点たちがどのように現れるかと言うことを 説明する理論を作りたいと思い、現在この問題も考えています。
また最近は特異点論の微分幾何学への応用にも 興味を持っています。 例えば、古典微分幾何学での多くの概念は距離二乗関数の特異点として認識されます。 特異点論だと思って古典微分幾何学を見直すと、新たな発見につながる 可能性があると思っています。