位相

第2章

位相

距離空間において,極限や連続の概念は開集合のことばで記述されることがわかった.このことから,開集合の族が定義された集合を位相空間とよんで考察の対象にするようになったのである.位相を研究する位相数学はハウスドルフの著書「集合論」(1914)によって集大成された.

目次

  1. 位相空間
  2. 部分空間位相,直積位相
  3. 連続写像
  4. ハウスドルフ空間

2.1 位相空間

定義 2.1 集合 X の位相とは次の条件を満たす X の部分集合の族 O をいう.この族 O に属する部分集合を開集合という.

  1. X ∈ O ,空集合 ∈ O.
  2. 有限個の U1, ..., Un ∈ O について,U1∩・・・∩ Un ∈ O である.
  3. 族 Uλ ∈ O, (λ∈ Λ) について,∪λ∈ Λ Uλ ∈ O である.

位相が定義された集合を位相空間という.位相空間は位相 O を明示して,(X,O) と書くこともあるし,単に X と書くこともある.もちろん,距離空間の開集合は上記の条件を満たしているので,距離空間は位相空間である.

X を空でない集合とする.明らかに,O = { X のすべての部分集合 } は位相の要件を満たしている.この位相を離散位相という.

空でない集合 X について,O = { X, 空集合 } は位相を定義する.この位相を自明な位相(密着位相ともいう)という.

X を無限集合とする.このとき,O = { U ⊂ X | Uc は有限集合 } は X の位相を定義する.

問題 3 点からなる集合 X = { a,b,c } のすべての位相を決定せよ.

位相空間 (X,O) の部分集合 F ⊂ X の補集合が開集合のとき,すなわち,Fc ∈ O となるとき,F は閉集合であるという.部分集合 A ⊂ X について,A を含む最小の閉集合を A の閉包といい,A- で表す.

補題 2.2 [閉集合の性質] 

  1. X 自身および空集合は閉集合である.
  2. 有限個の閉集合 F1, ..., Fn の和集合 F1∪・・・∪ Fn は閉集合である.
  3. 閉集合の族,Fλ (λ∈ Λ) について,共通部分 ∩λ∈ Λ Fλ は閉集合である.

問題 A が閉集合である必要十分条件は A- = A であることを示せ.

点 x を含む開集合 U を x の開近傍という.さらに,x の開近傍を含む部分集合 W を x の近傍という.

2.2 部分空間位相,直積位相

定義 2.3 (X,O) を位相空間とする.X の部分集合 Y に対して,OY = { Y ∩ U | U ∈O } は Y の位相を定義する.この位相を部分空間位相あるいは相対位相といい,位相空間 (Y,OY) を (X,O) の部分空間という.

問題 位相空間 X の部分空間 Y の閉集合 F は X の閉集合 G によって,F = Y ∩ G と表される.

問題 閉区間 [0,1] を R の部分空間と考えるとき,[0,1) や (0,1] は [0,1] の開集合であることを示せ.

定義 2.4 2つの位相空間 (X,OX), (Y,OY) が与えられているとき,直積集合 X × Y に自然な位相を定義することができる.X の開集合と Y の開集合の直積集合の和集合全体を X × Y の開集合とするのである.この位相を直積位相 という.すなわち,次のように定義するのである.

OX × Y = { ∪λ∈ Λ(Vλ× Wλ) | Vλ ∈ O, Wλ ∈ OY }

位相空間の用語をいくつか導入しておく.(X,O) を位相空間とする.点 x ∈ X が A の触点であるとは x の任意の開近傍 U について,A ∩ U が空集合でないことをいう.さらに,x の任意の開近傍 U について,U ∩ (A\ { x }) が空集合でないとき,x は A の集積点であるという.また,A の点 x について,U ∩ A = { x } となる x の開近傍 U が存在するとき,x は A の孤立点であるという.

例題 2.5 x ∈ A- となる必要十分条件は x が A の触点であることである.

(必要条件)点 x が A の触点でなければ,x の開近傍 U が存在して,U ∩ A は空集合である.このとき,A ⊂ Uc である.Uc は閉集合だから,閉包の定義により,A- ⊂ Uc が成立する.したがって,U ∩ A- は空集合であり,x A- が結論される. (十分条件)x A- を仮定する.U = (A-)c は x の開近傍であり,もちろん,U ∩ A- は空集合 である.このとき,A ⊂ A- だから,U ∩ A は空集合であり,x は A の触点でない.

2.3 連続写像

f : X → Y を位相空間 X,Y の間の写像とする.Y の任意の開集合 U の逆像 f-1(U) が X の開集合になるとき,f は連続写像であるという.また,f が x ∈ X において連続であるとは,像 f(x) の任意の近傍 U の逆像 f-1(U) が x の近傍になることをいう.

補題 2.6 f が連続である必要十分条件は f が X のすべての点で連続であることである.

証明(十分条件)U を Y の開集合とする.任意の点 x ∈ f-1(U) について,x を含む開集合 Vx で Vx ⊂ f-1(U) となるものが存在する.このとき,f-1(U) = ∪x ∈ f-1(U) Vx であり,U が開集合であることがわかる. (必要条件)f(x) の近傍 W は f(x) の開近傍 U を含む.f の連続性により,U の逆像 f-1(U) は X の開集合になる.したがって,f-1(W) は x の近傍である.

定義 2.7 連続写像 f : X → Y が全単射写像で逆写像 f-1 も連続写像のとき,f を同相写像という.同相写像が存在するとき,X と Y は同相であるという.互いに同相な位相空間に共通な性質を位相的性質という.

2.4 ハウスドルフ空間

位相空間 (X,O) の任意の異なる 2 点 x,y に対して,x の開近傍 U と y の開近傍 V で,U ∩ V = 空集合 となるものが存在するとき,X はハウスドルフ空間であるという.これは,任意の 2 点を分離する程度に開集合が多くあるということを意味している.

距離空間 (X,d) はハウスドルフ空間である.というのは,2 点 x,y の距離を d = d(x,y) とするとき,正数 ε を ε <1/2 となるようにとり,U = Bε(x), V = Bε(y) とおけば,U ∩ V = 空集合 が成立するからである.

問題 ハウスドルフ空間 X の 1 点 x は常に閉集合であることを証明せよ.


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