コンパクト

第4章

コンパクト

コンパクトという概念を習得すると,大変便利である.

目次

  1. コンパクト空間
  2. コンパクト集合

4.1 コンパクト空間

位相空間 X の部分集合 A の開被覆とは,開集合の族 O = { Uλ}λ∈ Λ で,A ⊂ ∪ λ∈ ΛUλ を満たしているものをいう.とくに,X 自身の開被覆であれば,X = ∪λ∈ ΛUλ となっている.

平面 R2 において,U(n,m) = B1(n,m) とすると,O = { U(n,m) | n,m∈Z } は R2 の開被覆である.

定義 4.1 位相空間 X の部分集合 A について,A のどんな開被覆にも有限部分被覆 が存在するとき,A はコンパクトであるという.つまり,A がコンパクトであるということは,任意の開被覆 A ⊂ ∪ Uλ が与えられたとき,その中から有限個の開集合 U1, ..., Un を選んで,A ⊂ U1∪・・・∪ Un とできるということである.

位相空間 X 自身がコンパクトであれば,X はコンパクト空間とよばれる.距離空間においては,コンパクトという概念は点列コンパクト,すなわち,A 内の任意の点列 { xn } には必ず A の点に収束する部分列が存在するという 概念と一致する.歴史的にはこの点列コンパクトという概念の方が先に考えられた.

R はコンパクト空間ではない.

有限集合はいつでもコンパクトである.

命題 4.2 X がハウスドルフ空間であれば,X のコンパクトな部分集合 A は閉集合である.

証明 A ⊂ X をコンパクトな部分集合とし,A ≠ X, A ≠ 空集合 とする.補集合 Ac が開集合であることを示す.そのためには,Ac の任意の点 x について,x の開近傍 U で,U ⊂ Ac となるものを見つければよい.X がハウスドルフ空間であるので,各点 a ∈ A に対して,x の開近傍 Ua と a の開近傍 Va で,Ua ∩ Va が空集合になるものが存在する.このとき,A ⊂ ∪a ∈ AVa となり,{ Va } は A の開被覆である.A がコンパクトであるので,A の有限個の点 a1, ..., an が存在して,A ⊂ Va1∪・・・∪ Van が成立する.ここで,U = Ua1∩・・・∩ Uan とおくと,U は x の開近傍である.各 ai について,U ⊂ Uai であるので,U ∩ Vai は空集合である.したがって,

U ∩ (Va1∪・・・∪ Van) = (U ∩ Va1)∪・・・ ∪(U ∩ Van) = 空集合

となり,U ∩ A は空集合である.すなわち,U ⊂ Ac が結論される.

補題 4.3 コンパクト空間 X の閉部分集合 F はコンパクトである.

証明 O = { Uλ } を F の開被覆とする.F が閉集合のとき,補集合 U = Fc は開集合である.このとき,{O,U} は X の開被覆である.X がコンパクト空間であれば,O に含まれる有限個の開集合 U1, ..., Un が存在して,X = U1∪・・・∪ Un∪ U が成立する.U は F の補集合であったので,F ⊂ U1∪・・・∪ Un でなければならない.したがって,F はコンパクトである.

定理 4.4 位相空間 X,Y と連続写像 f : X → Y が与えられているとする.A が X のコンパクト集合であれば,像 f(A) もコンパクトである.

証明 O = { Uλ }λ∈Λ を像 f(A) の開被覆とする.f の連続性により,各 λ について,f-1(Uλ) は X の開集合である.もちろん,A ⊂ f-1(f(A)) であるので,{f-1(Uλ)}λ∈Λ は A の開被覆になる.A はコンパクトだから,有限部分被覆 A ⊂ f-1(U1)∪・・・∪ f-1(Un) が存在する.したがって,f(f-1(Ui))⊂ Ui に注意すると f(A) ⊂ U1∪・・・∪ Un が成立し,f(A) がコンパクトであることが結論される.

コンパクトであるということは位相的性質である.すなわち,f : X → Y が同相写像であれば,X の部分集合 A がコンパクトであることと,像 f(A) がコンパクトであることは同値である.

4.2 Rn のコンパクト集合

定理 4.5 Rn の部分集合 A については以下の条件は同値である.

(i) A はコンパクトである.

(ii) A は有界閉集合である.

証明 (i) ⇒ (ii).命題 4.2 により,A が閉集合であることがわかるので,A が有界であることを示せばよい.いま,O = (0,0) として,Un = Bn(0) とおけば,{ Un }n ∈ N は A の開被覆である.したがって,ある n が存在して,A ⊂ Un がわかる.これは,A が有界であることを示している.

(ii) ⇒ (i).n = 1 のときには,ハイネ・ボレルの定理とよばれる.A は有界であるので, R を十分に大きくとれば,A は一辺の長さが R の立方体

C(R) = [-R/2,R/2]n

に含まれる.補題 4.3 により,C = C(R) がコンパクトであることを証明すれば,A もコンパクトであることがわかる.このため,C がコンパクトでないと仮定して矛盾を導く.そこで,{ Uλ }λ∈Λ を C の開被覆で有限部分被覆をもたないものとする.このとき,C を一辺の長さが半分の 2n 個の立方体に分割する.小立方体の少なくとも1つは有限個の { Uλ } では覆われないので,それを C1 とする.次に,C1 を一辺の長さが半分の 2n 個の小立方体に分割する.有限個の {Uλ} で覆われない小立方体が存在するので,それを C2 とする.このような操作を続けることにより,有限個の {Uλ} では覆われない立方体の列

C⊃ C1 ⊃ C2 ⊃ ・・・ ⊃ Ck⊃・・・

が構成される.

各 Ci から点 xi をとると,点列 { xk } はコーシー列である.というのは,d(Ck) で Ck の直径を表すとき,

d(Ck) = R/2k

であるので,j ≧ k であれば,xj,xk ∈ Ck であって, ||xj - xk|| ≦ R/2k が成立するからである.したがって,{ xk } はある点 x に収束する.立方体 C は閉集合であるので,x ∈ C である.{ Uλ }λ∈Λ が C の被覆であったので,x ∈ Uλ となる λ が存在する.十分小さい正数 ε をとれば,Bε(x) ⊂ Uλ が成立する.このとき,十分大きい k をとれば,||xk - x|| < ε/2 および, R/2k < ε/2 とできる.このとき,Ck の点 y について,

||y - x|| ≦ ||y - xk|| + ||xk - x|| < ε

となるので, Ck⊂ Bε(x)⊂ Uλ が成立する.これは,Ck が有限個の { Uλ } では覆われない立方体であったことに反する.

n-次元球面

Sn = { (x0, ..., xn) ∈ Rn+1 | x02 + ・・・ + xn2 = 1} はコンパクトである.

例題 コンパクト空間 X 上の実数値連続関数 f : X → R には最大値および最小値が存在する.

定理 4.4 により,像 f(X)⊂ R はコンパクトである.定理 4.5 により,f(X) は有界閉集合である.そこで,

α = inf f(X), β = sup f(X)

と定めれば,f(X) は閉集合だから,α, β ∈ f(X) であって,α = f(a) および,β = f(b) となる点 a, b ∈ X が存在する.このとき,X の任意の点について,α ≦ f(x) ≦ β が成立する.

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